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鹿の肉を喰っていた。持て余した肉の大きさに、ナイフとフォークをじわじわと動かして、金属の先端が皿にあたる細く澄んだ音へ、耳を澄ますようにしていた。音と音との間が、時雨の走って過ぎる間ほどの、長さに感じられた。人の話に受け答えをするには、時雨の中と同様に、何のさしさわりもない。声はかえって通った。
野川/古井由吉
日時: 2007年03月11日 01:45 | パーマリンク
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